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サンフランシスコ アジア芸術美術館の夏の展示

アメリカ人から一番よく聞く日本語の話し言葉は「サヨナラ」。じゃあメディアで一番よく目にする日本語の活字はなにかというと、これが「ゲイシャ」なんです。数年おきに「Geisha」菌がサンフランシスコ湾岸地域に一夜にして出現し、ある日突然、消えていくのです。

で今回「Geisha」菌が出現したのは6月末。街灯にくくり付けられた昇りや(写真参照)バス停のサイドポスターという形で大発生。なんでゲイシャがサンフランシスコ湾岸沿い在住の、教養あるアメリカ市民のイマージネーションを揺すぶるのかピンときませんが、商業ベースにのせるだけのことはあるらしい。

というのはアジア芸術美術館の今年夏の特別展示のタイトルがなんと Geisha - Beyond the Painted Smile。「ゲイシャ - 白粉ペッタリの笑い顔の向こうに」とでも言いましょうか。で冷めた気持ちでチェックに行きました。

びっくりしたのは、昔美術の教科書で見たり、切手のデザインにもなったかの有名な「踊子像」が入ってすぐ右の壁に、ノンシャランと、こともなげにかかっていること。ミネソタ云々の所蔵となっているので「へぇー」。国外に流出した傑作の一つなんだね。

その向かいにかかっている三つの掛け軸の一つが、踊子像に負けず劣らず有名な女人像。粋な着物があまりに美しいのでどこの所有物かは見すごしたが、日本では写真でしかお目にかかったことがないので、多分これも流出品だろう。

歌麿、豊国、北斎の作品がゾロゾロ揃って見れるのも、日本ではあまりないことなんじゃないでしょうか。

ゲイシャ=売春婦という連想は誤解で、三味線とか日本舞踊の玄人というのが本当のゲイシャ像と、アメリカ人を啓蒙するのが目的らしき展示でありました。これからの芸者プロフェッショナルはそうかも。でも以前はね... ムムー、まあいいか。

この展示は9月26日まで。ここへ行ってゲイシャの写真をクリックすると展示物の案内が見られる。

蛇足: ゲイシャがアメリカ人の心を揺さぶるのはなぜという謎を解こうと、「似たような興味を持つとしたらアメリカでは何だろう」としばらく考えて思い当たったのが「ウィッチ」、つまり「魔女」。

魔女狩りはマサチューセッツ州のサーレムで17世紀に本当に起こった事件で、20数人が火あぶりなどで処刑された。で美術館でもらったパンフレットを見たら、なんとこの展覧会、そのサーレムにあるエセックス美術館が企画し、それをサンフランが借りてるんだって。調べてみるとこの美術館、魔女の資料収集で有名だそうな。

ゲイシャがアメリカ人の心を引くのは、やはり魑魅魍魎、おどろおどろした物に対する興味、つまり怖いものみたさなんでしょうかね。
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by michikoinsf | 2004-08-08 00:44 | アート


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